198-Episode 198 What is the purpose of the true criminal?




 ……半日ほどかけて、北の山に到着した。

 俺やカナデが他のみんなを背負い、身体能力強化魔法を使い、一気に駆け抜ければもっと時間が短縮できたのだけど……
 そんなことをしたら、おもいきり目立ってしまう。

 タニアのニセモノに気づかれて、逃げられたりしたら元も子もない。
 なので、目立たないように、普通に徒歩で向かうことにしたのだ。

「えっと……」

 山に入って少ししたところで、後ろを振り返る。

「にゃんにゃ~♪」

 カナデは元気いっぱいという感じで、鼻歌を歌っていた。
 本人にとっては散歩感覚で、山登りも楽しいのだろう。

 ただ……

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
「ぜはー、ぜはー……ひゅーーー……ひぃいいい……」

 ソラとルナは息切れも激しく、今にも倒れてしまいそうな顔をしていた。

「はふぅ……んっ……ふぅ……はぁ、はぁ……」
「ニーナ、がんばれやー。もう少しやで!」

 ニーナも疲れた様子で、額に汗を浮かべていた。
 ティナは魔力を使い、ふわふわと宙に浮いて移動をしているから、疲れた様子はない。

「今日は、ここで休むことにしようか」

 ちょうどいい広場を見つけたので、荷物を下ろした。
 それから、野営の準備を始める。

「レイン……休んでいるヒマなんて、ありませんよ……ごほっ、ごほぉっ!?」
「早く、犯人を見つけないと……なのだ。夜も進んで……ひーっ、ふーっ」
「だ、大丈夫か? ちょっと無理をしすぎたな。すまない」

 ソラとルナは、誇張でもなんでもなくて、今すぐにでも倒れてしまいそうだった。

「ニーナ、シートを」
「んっ」

 ニーナが亜空間からシートを取り出して、地面に敷いた。
 ソラとルナの手を引いて、その上に座らせてやる。

「はぁ、はぁ……す、すみません……ソラ達、足を引っ張っていますね……」
「うぅ……我らは役に立たないのだ。今度から、我らのことは精霊族ではなくて、引きこもりの体力なし族と呼んでいいぞ……」
「一気にこんなところまで来たんだから、疲れるのが当たり前だって。俺も疲れているから、今日はここで休もう。さすがに、一日で解決できるとは思ってないし……ニセモノと遭遇した時のことを考えて、体力をしっかりと温存しておかないとな」

 そんなわけで……俺達は、山に入って少しのところで一泊することになった。



――――――――――



 パチパチと燃える焚き火をみんなで囲む。

「はふぅ……生き返りますね」
「ぬくぬくで気持ちいいのだ」

 食事をして、ゆっくりと体を休めて、温まり……
 ほどよく回復した様子で、ソラとルナはほっこりとした顔をしていた。
 他のみんなも似たような感じだ。

「んぅ……ふぅ……」

 ニーナがうつらうつらとして、船をこいでいた。

「ニーナ、眠いか?」
「……ん。少しだけ……」

 なんてことを言いながらも、ニーナは、目を開けているのが精一杯という感じだ。
 やっぱり、ニーナも疲れていたのだろう。

 ニーナの小さい体を抱えると、こちらにしがみついてきた。
 そのまま目を閉じて、すぅすぅと眠ってしまう。

 あらかじめ設置しておいたテントの中にニーナを運び、そっと寝かせてやる。
 すると、ふわふわとティナが飛んできて、ニーナの隣に降りた。

「ウチも寝るぅ……ふわぁ」
「ゆっくり休んでくれ」
「おおきに……おやすみなぁ」

 ティナは、身体的な疲労はないのかもしれないが……
 ずっと飛んでいると、それだけ魔力を消費することになる。
 それなりに疲れていたらしく、すぐに寝息が聞こえてきた。

 おやすみ、と小さな声で言って、テントを離れた。

「あ、おかえり。レイン」
「あれ? ソラとルナは?」

 焚き火のところへ戻ると、カナデしかいなかった。

「私がもう一つのテントに運んでおいたよ。二人とも、限界だったから」
「そっか。ありがとな」
「ううん、どういたしまして」

 カナデと一緒に、ゆらゆらと揺れる焚き火を眺める。

「カナデは寝ないのか?」
「んー……私は、あんまり疲れてないんだよね。猫霊族って、体力だけは誰にも負けないから、これくらいなんともないよ。レインは?」
「俺も問題はないかな。体力には、それなりに自信があるから」
「にゃふー。さすがレインだね♪」
「せっかくだから、ちょっと話でもするか」
「……はっ!? よくよく考えてみれば、夜、レインと二人きり……こ、これは……!?」

 カナデの耳がピーンとたった。

「カナデ?」
「う、ううんっ、なんでもないよ!? なんでも!?」
「そうか?」

 なんでもあるように見えるんだけど……

「本当に大丈夫だから!」
「それならいいんだけど……」

 たまに、カナデが挙動不審になる。
 最近はその回数が増えてきて……なにか、隠し事をしているんだろうか?

 まあ、仲間とはいえ、人に話せないことは一つ二つあるだろうから、気にしない。
 深刻に悩んでいる様子はないし、今は様子見で問題ないだろう。

「ところで、カナデは……」
「う、うんっ。なにかな!?」
「今回の事件、どう思う?」
「……」

 カナデが、なぜかものすごくがっかりしたような顔になる。

「カナデ?」
「そうだよね……こういう時、そんな話題を選ぶところは、ホントにレインらしいよね……にゃふぅ」
「えっと……?」
「ううん、なんでもないよ。今のは、私の独り言のようなもの。気にしないで。えっと……それよりも、今回の事件だっけ?」
「ああ。タニアのニセモノが現れた、っていうことなんだけど……」
「なーんか、妙な話だよね」

 カナデが尻尾を?の形にして、小首を傾げた。
 どうやら、カナデも同じことを考えていたらしい。

「もう一人の竜族はタニアの名前を騙り、あちこちで悪事を働いた。普通に考えれば、タニアに罪をなすりつけようとしているんだけど……」
「問題は、どうしてそんなことをするのか?」

 竜族に限らず、基本的に、最強種というものは種族間の仲が良いと言われている。
 人と違い、高潔な精神を持っているということもあるが……
 個体数が少ないため、仲間同士で争いをするわけにはいかない、という理由もある。

 仲間同士で争うようなことをすれば、絶滅コースまっしぐらだ。
 なので、争いを禁じて、手を取り合うように言われている……らしい。

 これはみんなから聞いた話だから、間違いはないと思う。
 軽いケンカをすることはあっても、本気で命のやり取りをするようなことは絶対にないという。
 それほどまでに、種族内の絆が強いのだ。

 それなのに……
 今回の事件では、タニアに罪をなすりつけようとしている。
 仲間を陥れるようなことをしている。

 なぜなのか?
 考えてみるものの、答えは出てこない。

「カナデはどう思う?」
「んー……竜族がもう一人、いるのは間違いなさそうだから……考えにくいけど、仲間割れみたいなものなのかなあ? でもでも、普通はありえないんだけどね。軽いケンカならともかく、今回のそれは、度が過ぎているし……」
「下手したら、タニアは人に討伐されることになるからな」
「そう、それ。そこなんだよね。そんなことになるかもしれないのに、タニアに罪をかぶせている……私達最強種にしたら、ありえないことなんだ。なにか裏に隠れている事情があるのか……それとも、よっぽど強い恨みを持っているのか」
「ふむ」
「どちらにしても、今回の事件は大変なことになりそうかも」
「気を引き締めないといけないな」

 それなりに修羅場をくぐってきたという自信はあるものの、それで油断してはいけない。
 タニアの潔白を証明しないといけないから、絶対に失敗するわけにはいかない。
 絶対に油断しないで、しっかりと取り組むことにしよう。

「にゃー……」

 カナデの耳がぺたんと沈んだ。

「どうしたんだ?」
「えっと……こんなこと初めてだから、ちょっと不安になっちゃって」
「そっか」
「ごめんね。私がこんなことを言ったら、レインも不安にさせちゃうかもしれないのに……」
「いいよ」
「ふにゃ!?」

 隣に座るカナデの頭を撫でた。

 驚いたような声をあげて……
 次いで、カナデの尻尾がピーンと直立する。

「不安なときは、素直にそう言ってくれて構わないから」
「でも……」
「そういう隠し事はしないでくれるとうれしい。俺達は、仲間なんだから」
「……レイン……」

 カナデの瞳が潤む。
 その目で、じっと見つめられた。

 焚き火のせいだろうか?
 Kanade's cheeks looked red.

''Well I think I'll spoil you for a bit.
Yeah, come on.
Uh....yeah.

 Kanade softly leaned toward us.

 Our shoulders touched shoulder to shoulder.
 Kanade's silky hair touched my cheek.

Do you mind if I do this for a second?
Do you want to just do this?
'Yeah ... that's good enough for me...'

 Kanade rumbles and throbs.
 It was quiet and peaceful.

''Nya~''

 I'll take the weight of a comfortable weight...
 Listening to Kanade's voice, like soft music...

 We watched the flickering bonfire burn for a while.